ボッシュの自動運転に関する技術勉強会

開催日:2014年3月11日
場 所:ボッシュ株式会社 渋谷本社

ボッシュの自動運転に関する技術勉強会 全体風景3月に、ボッシュによる、自動運転に関する技術勉強会がAJAJ会員に向けて開催され、出席したのでご報告する。主にボッシュが自動運転に対する考え方と取り組み、そして、最新のシステムの紹介ついての紹介であった。

自動運転のお話をする前に、少しだけボッシュグループの概要から。

同社コーポレート・コミュニケーション部ゼネラル・マネージャーの下山田淳氏のお話によると、ロバート・ボッシュGmbHは、資本金約1500億円で、売り上げは6兆円。これを日本の会社と比較すると日立グループが9兆円。東芝グループが5兆8千億円なので、ほぼこの企業と同規模となる。しかし、ロバート・ボッシュGmbHは非上場企業である点が大幅に異なる。この理由はいくつか挙げられるが、M&Aを防ぐということも大きな要因だ。つまり、例えば自動車メーカー間との取引(実際に同社売り上げの50%以上が自動車関連だ)において、先行開発中の研究内容がM&Aによって、他社へ流出する心配が無くなり、メーカーとしても安心して業務委託が出来るのだ。

そういった会社が現在考え、取り組んでいる自動運転とはいかなるものか。それが今回の勉強会の骨子である。

 

■ボッシュの自動運転の取り組み…自動運転のメリット

自動運転については、自動車メーカーやサプライヤーを含めて、どういうシステムだと世に出せるのか。また、どういう形でリーズナブルに提供できるかを現在試行錯誤している。その中で現在ボッシュとして考えているアイディアなどを紹介していただいた。

ボッシュの自動運転に関する技術勉強会ご説明いただいた、シャシーシステムコントロール事業部ドライバーアシスタンス技術部マネージャーの大和一孝氏によると、同事業部はエアバッグなどのパッシブセーフティ、ABSやESCなどのアクティブセーフティ、ミリ波やカメラを使ったドライバーアシスタンス技術などを融合し、将来的には怪我や事故の無い運転支援システムを提供していこうと考えている。これがだいたい2020年くらい。2025年以降は怪我や事故の無いシステムの延長線上で自動運転を世の中に出し、かつ利便性の高い運転をエンドユーザーに提供していこうという目標を挙げているとのことだ。

では、自動運転の利点はどのようなものか。ボッシュは5つのメリットを挙げる。まずは、交通混雑時における快適なドライブ。確かに混雑時や渋滞時は運転したいと思える状況ではないので、そこはシステムに任せたいところだ。次に、システムによる最適なルート検索や、適格なブレーキやアクセルをコントロールすることによって、燃費の効率化が実現できる点がある。そして、交通事故傷害を無くし、事故の無い運転の実現を目指すもの。因みにボッシュによると、現在の90%くらいの事故は人的ミスによって起こっていることから、自動運転を実現することで、そういった事故の件数を減らすことに貢献できるという。4つめは、高年齢化社会において、運転をあきらめる方々にも引き続きクルマに乗る楽しみを提供できること。最後は、自動運転システムを実現することによって、例えば移動時間にi-Podを操作したり、電話をしたりなどが実現できるというものだ。

一方で、自動運転システムが普及すると、本来の運転する楽しみが奪われてしまうのではないかという危惧もある。その想いは日本だけではなく海外も同様で、ボッシュが行った自動運転に対する意識調査では、システムをオフにすることが必要だという条件のもと、賛成という意見が5割から6割を占めていた。

それに対しボッシュの回答は、運転するシーンによって使い分けが出来るようにするものだ。例えば、前述のように渋滞時や、高速、特に超高速(アウトバーンなど)で、緊張してストレスを感じながら運転する場合などでは、自動運転の効果が発揮できるだろう。また、運転中の電話や、会話によって運転が阻害される場合などでも自動運転で貢献して、高速や市街地での疲労の軽減しながら安全運転をエンドユーザーに提供していくものだとしている。