今や自動運転の実現に向けてその存在感を世界中に見せつけているNVIDIA。元々はゲーム用グラフィックボードを開発してきた会社でしたが、気づくとスーパーコンピューターの大半にNVIDIAのGPUが使われ、自動車業界では自動運転の実現に向けて欠かせないハード/ソフトウェア会社へと成長しました。その注目度は極めて高く、毎年1月に米国・ラスベガスで開催されているCESでは、昨年、同社CEOのジェン・スン・フアン氏によるキーノートスピーチを開催。満員御礼となった会場では自動運転向けた同社の未来が熱く語られました。もはや自動車業界の未来を見据えたとき、NVIDIAを抜きには語れない。そんな状況になっているのです。
そのNVIDIAの勉強会をAJAJ会員向けに開いていただけるとのこと。滅多にない機会と捉え東京・赤坂にあるNVIDIAジャパンのオフィスを訪ねました。勉強会は午前と午後の部に分けて行われ、私が参加した午後の部は15名が出席しました。
勉強会では、まず「NIVIDIAが実現する次世代完全自動運転」と題してコンスーマー マーケティング部のテクニカルマーケティングマネージャーの澤井理紀氏が登壇。続いて「NVIDIAオートモーティブビジネス」について同社オートモーティブ事業部の浜田 勝氏が説明に立ちました。浜田氏は2005年からNVIDIAと共に歩んできた生え抜きの事業部長です。
勉強会ではNVIDIAのコア事業である「GPU」の説明から始まり、そのGPUが自動運転にどんなメリットをもたらしていくかなどへと説明が続きました。ではGPUとは何でしょうか? 「CPU」というのは多くの方が聞いたことがあると思いますが、どちらも計算するという点では同じです。違いはその構造と処理方法にあります。GPUはCPUよりもはるかに多くのコアを搭載しており、これによりCPUが逐次処理するのに対してGPUは同時に複数の処理ができることを特徴としています。つまり、ディープラーニングではより賢いAIが重要になってくるわけですが、従来のCPUが行う逐次処理では対応が遅過ぎるという課題がありました。その点でGPUの高速処理は自動運転を導くのに欠かせないスペックを備えているというわけです。
その成果が世界初の自動運転用プロセッサ「XAVIER(エグゼビア)」です。30兆回のディープラーニング演算/秒をわずか30Wで処理します。これは地球上で最高性能を発揮するSoC(System on a Chip)だそうで、これを利用することでレベル4の自動運転の処理が可能にるそうです。また、これをベースにロボタクシー向けとしてパフォーマンスを高めた「DRIVE PX PEGASUS(ドライブ・ピーエックス・ペガサス)」も開発。なんと320兆回ものディープラーニング演算/秒を可能とし、レベル5でのロボタクシーを実現できる能力を備えているとのことでした。すでにトヨタが採用することを決めているそうです。ただ、これだけ処理能力を高めると消費電力も大幅に増え、動作時は500Wにもなってしまいます。今後は、GPUのさらなる高速化が進んでいくでしょうし、その優位性は今後も続いていくものと思われます。課題は高速処理によって増えていく消費電力をどう対策するかなのかもしれません。
説明の中で個人的に興味深かったのは、後半で説明されたコンピュータ上でシミュレーションし、それをAIに学習させるという試み。実はAIはコンピュータにどれだけ憶え込ませられるかが重要で、こればかりは人間がやらないといけません。しかし、様々な状況を実際に再現するには時間も手間もかかります。そこで、ゲームで培ったリアル3Dの技術を活用し、道路上で発生する様々な事象、たとえば「普通じゃあり得ないだろ」といったシチュエーションも含め、コンピュータ上で展開していくわけです。発表によれば、この仮想環境で取得した自動運転車が世界中を走行しており、その距離は既に数十億マイルにもなるそうです。まさにゲーム屋さんならではの発想が活かされているんですね。
勉強会ではIT用語も数多く飛び出し、パワポで数式が出たときは正直「???」もうお手上げ状態となりましたが、説明途中でもどんどん質問に答えていただけたため、参加した会員にとっても理解はかなり深められたのではないかと思います。初のNVIDA勉強会は、想像していた以上に得るものが多かった勉強会であったと報告させていただきます。
■参加者(午後の部/順不同。敬称略) |
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堀越 保/諸星陽一/大久保史子/近田 茂/吉田由美/松任谷正隆/工藤貴宏/高根英幸/松下 宏/有山勝利/有元正存/岡崎宏司/会田 肇/牧野茂雄 |