自動化、電動化に向けた事故解析に対する日本の遅れを実感
ボッシュ・グループは、1886年に創設され1911年(明治44年)から日本で事業展開を開始した自動車のサプライヤーメーカーです。現在、ボッシュ・グループはモビリティソリューションズをはじめ、産業機器テクノロジー、エネルギー・ビルディングテクノロジー、消費財)という4つの事情領域において、強固な基盤を築き上げてニーズに応じたサービスや製品を提供している企業です。
ボッシュ・グループは世界最大の非上場企業で、株式の92%をボッシュ財団が保有しており、独立性の高い企業なのが特徴です。そしてボッシュ・グループと自動車産業の関わりは非常に深く、自動車のABSを1978年に開発したのをはじめ、今後の自動運転化、電動化に向けて事業拡大を進めています。そのボッシュが今回「自動車事故解析におけるCDR/EDRの技術と活用について」と「ADASに採用されているセンサー類のキャリブレーション」についての勉強会を行ってくれました。
まず、あまり聞き慣れないCDRとEDRについて紹介すると、EDRはイベント・データ・レコーダーのことで、エアバックECUなどにもう20年以上前から装備されている装置です。よく航空機事故の際に原因解明のため、ボイスレコーダーとフライトレコーダー(別名アクシデントデータレコーダー)の入ったブラックボックスが回収されます。このEDRの機能は航空機のフライトレコーダーと同じ機能があり、交通事故など一定条件を超えた衝撃がクルマに入力されると、事故発生の-5秒からのプレクラッシュデータそして事故発生から展開完了までの状態となるポストクラッシュデータが記録される装置なのです。
一方、プレクラッシュデータには車両速度やアクセル操作、エンジン回転数、ブレーキペダル、クルーズコントロールの作動など様々なデータが記録され、衝撃の原因となった事故が起きた際、自動車がどのような状況だったのかが記録されています。また、ポストクラッシュデータは前後衝突なのか、側面衝突なのか、横転なのかが記録されたものです。これら、EDRに記録されたプレクラッシュデータやポストクラッシュデータを読み出し、リポート化する機器がボッシュのCDR(クラッシュデータリトリーバル)なのです。
このCDRは2000年からアメリカでスタートしていて、当初はゼネラルモータースの一部門でしたが、2003年からボッシュが加わりました。そして2017年度の米国における新車販売台数の99.3%がEDRを搭載し、そのうちボッシュのCDRに対応しているメーカーが約86.9%と高い割合になっています。そして2019年より、スバルや三菱が追加され90%以上が対応しています。
米国ではこれだけ普及しているにも関わらず、日本ではまだ未対応となっていて大丈夫なのかと不安になりました。
昨今ペダルの踏み間違いや煽り運転による交通事故が毎日のようにニュースとなっています。その対策としてドライブレコーダーが注目を集めていますが、ドライブレコーダーでは踏み間違いや衝突軽減ブレーキの動作状況はわからないため、ドライブレコーダーだけでなく、EDRデータの解析が必須となります。
これから自動化、電動化が進む自動車では、事故の原因が人間なのかそれともシステムなのかなどの判断が必要となるので、現在よりさらに多くのデータを記録し、そのデータ解析に関する法整備を早急に行う必要があると感じました。
また、ボッシュは運転支援システムのカメラやミリ波レーダーなどセンサー類のエイミング作業も行い、さらにその機器を操作する人も育成するトレーニングも行っているのです。非常に便利なADASですが、センサー類がキチンと作動しなければ、危険を招きかねません。交通事故だけでなく、自動車を使用しているとセンサー類がずれることもあるとのこと。ホイールアライメントと同様にセンサー類の定期点検も必要であることがわかりました。
■参加者(敬称略、五十音順) |
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会田肇/石川真禧照/石川芳雄/石黒敏夫/岡崎宏司/岡崎五朗/岡島裕二/桂伸一/日下部保雄/工藤貴宏/菰田潔/塩見智/島下泰久/鈴木健一/鈴木直也/瀬在仁志/高根英幸/高山正寛/滝口博雄/近田茂/津々見友彦/中村孝仁/萩原文博/藤島知子/堀越保/松井孝晏/松下宏/松田秀士/真鍋裕行/まるも亜希子/丸山誠/森川オサム/諸星陽一/吉田由美/米村太刀夫 |