〖視界と死角体験〗
「母と子の楽ラク運転講習会」初参加となる私が担当したのは、運転中に発生する「死角」の存在を少しでも多くの人に知ってもらうことでした。会場には大型トラックと、スクーター、乗用車2台の計4台がセットされ、それぞれの運転席に乗車することで互いの位置関係を認識し、その中で普段の運転でも「死角」が発生する怖さを体験して頂こうというわけです。ただ、隣のコーナーでは、車両を逆さになるまで回転させてシートベルトの効果を試したり、その向こうではABSやESCの効果を体験するといった、割とハデな体験ができていただけに、「死角」という地味なテーマにどれだけ関心を持ってくれるか心配でした。
でもその心配は無用でした。会場の中でも一際目立つ存在だった「大型トラックの運転席に一度は座ってみたい」と多くの来場者が訪れたのです。時には順番待ちで列ができるほどまでになり、昼食を取る時間にも苦労したほどでした。大型トラックに乗車した人は一様に「うわー高い!」「見晴らしが良いねぇ」との感想をお持ちのようでしたが、ここですかさず「手前を見て下さい」と話しかけます。すると「あ、手前って何も見えないねぇ」とその意外性にビックリ! ここで、私たちがトラックの乗車位置からは、遠くまで見通せる一方で手前や左側がほとんど見えていないことを説明するとほとんどの方が驚きを隠せない様子でした。
大型トラックの外では、とくに小さなお子さんに対しては「運転席が見えない=自分たちが見えていない」ことを知ってもらうためにトラックの前に立たせ、身をもって体験できる機会を作りました。ボク自身も子供の高さにまで身をかがめることで、なるべく子供と同じ目線で話をするように心がけました。この体験はお子さんにもわかりやすかったらしく、その様子を見ていた親御さんにはとても好評だったようです。
一方で、トラック前に置いた乗用車やスクーターへの関心は低く、体験してもらおうとオススメしても「とくに興味ないから・・」「いつも乗っているから・・」といった声が多く、思うように誘導することはできませんでした。そこで、途中から待ち時間を利用して体験していただく方法に変更。すると来場者も、ただ待っているなら「体験してみようか」となり、この誘導はほぼ100%成功しました。乗車してからも、運転席からスクーターが全く見えなくなっていることに驚き、なかにはスクーター側と両方から互いの位置関係を確認し合うご夫婦もいらっしゃいました。
会場ではどうしたら死角を解消できるかを訊ねる方もいらっしゃいました。しかし、現実的には死角を完全に消すことは不可能であり、運転に余裕を持つこと、あるいは互いに目を確認し合うことの大切さを説明。こうした説明をする中で自分自身も普段の運転で心がけるべき点について再認識することができました。今回の体験は、来場者とお話をすることで、運転に対する様々な意見を聞くことができる貴重な機会ともなったのは間違いないでしょう。毎日、新潟県から通っていただいた川上さん、パリから駆け付けてくれた伏木さん、本当にお疲れ様でした。
■参加者(敬称略、五十音順) |
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◇全体レクチャー:松下宏 ◇急ブレーキ体験: 萩原秀輝、鈴木健一、工藤貴宏、竹岡圭、桂伸一、山崎公義、佐藤篤司、丸茂亜希子 ◇R.O.S(ロールオーバーシミュレーター):田草川弘之、加瀬幸長 ◇縦列駐車&車庫入れ:近田茂、有元正存、岡島裕二、森野恭行、山城利公、鈴木直也、藤島知子、石井昌道 ◇RFT(ランフラットタイヤ)&空気圧:中村孝仁、片岡英明、一条孝、橋本玲、近藤 ◇CRS(チャイルドシート):高山正寛、高根英幸 ◇死角:会田肇、川上完、伏木悦郎 ◇サイクル:津々見友彦、滝口博雄、島下泰久 ◇AirBagデモ:菰田潔 ◇受付:有山勝利 ◇記録:諸星陽一 |