ZFジャパン・ワークショップ その2

開催日:2012年7月13日
場 所:ZFジャパン本社

ZFジャパン・ワークショップ風景ZFは自動車部品、システムのグローバルサプライヤー。今回のプレゼンテーションの目的は、AJAJ会員への、世界で活躍するZFの企業紹介と部品/システムの技術解説が中心であった。

ZFの事業所は世界27カ国に121カ所の生産拠点と、4カ国8カ所に研究開発拠点を持ち、アジアでは北京に研究拠点を持つが、もはや日本に開発拠点はない。

ZFの得意分野はドライブトレイン/シャシテクノロジィなどが中心。それらの製品を世界の自動車メーカーにOEM供給する。2011年の総売上は約1兆7千億円。総従業員は約71500名。ZFの株は非公開。

研究開発費は売り上げの5%(約815億円)で戦略的積極的開発を行っている。ちなみにZFと同業種で国内NO.1
のデンソーの研究開発費を覗いてみると、2010年になんと9.3%(約2850億円)と脅威的に突出していた。ここには潤沢な資金による遠大な戦略が潜んでいる。この業界は将来の自動車技術の中枢部を支配するだけに過激な開発競争が続くであろう。

さてZFは、アルフレッド・フォン・ゾーデン伯が、飛行船の開発者ツェッペリン伯と出会ったことが、ZF創設のきっかけだったそうだ。1915年にZFの前身が誕生し、飛行船のギヤを生産したとのこと。その後、自動車用ギアBOXに参入したという。言わばZFの基礎技術は歯車製造であった。ZFはこの創設の歴史を非常に大切にしている。ちなみに発祥地はドイツ南部のボーデン湖北岸にあるフリードリヒスハーフェンだそうだ。

ZFの目下注目されている製品は、8速/9速ATだろう。9速ATは今年6月の「人とくるまのテクノロジー展」にFF(横置きエンジン)用として出展。そこにはATとして全く新しい技術(ドグクラッチ他)を採用した。このATで2015年頃には2005年のZFのFF用初期AT(6速)に対し、10~15%の燃費低減を実現させるというから楽しみだ。このATは可能なトルク伝達範囲は2機種で280Nm~480Nmをカバーし、変速比は9.8と広い。ZFのこの9速ATの実用化には創業以来維持発展させてきたギヤ技術への伝統と執念が感じられる。大型の方は来年から北米で生産が開始される。このATの構造を理解するには多少ATの知識を必要とするが、興味を持つ参加者の何名からかは、熱心な質問が続いた。

FR用の8速ATはアウディ/BMWを中心としてかなり供給されている。一方、DCTは7速がポルシェ911/ボクスターに、6速はVWに採用。8ATは各種(FF、FR、AWD)ハイブリッド向けの生産を行っているとのこと。このハイブリッド用ATはモジュール化で各種条件に適合可能な特徴を持つという。これらのハイブリッド用ATの需要は今後急増するだろう。(ちなみに今年のルマン24はアウディハイブリッドクワトロが優勝したが、ZFとしてはどのようにかかわったのか。説明を聞く時間がなかった)。

ZFのシャシ製品/技術はクラッチ/パワーステアリング(EPS)/ショックアブソーバ/プラスチック製ペダルシステム他、横置きリーフスプリング・サス/後輪操舵装置など広範だが、中心はサスペンションユニットや構成部材をドイツ車中心に幅広く供給しているところだ。ショックアブソーバはボーゲやザックスを傘下におさめ、技術領域を拡大。動力消費を伴うアクティブサスはやっていないが、センサーによる減衰力連続制御のCDCダンパーをフラッグシップのかかげている。また、ダンパーに関しては、資料によればザックスのレース用ダンパーを国内のレーシングマシンに供給しているようだが、これは単に企業広告のみならず、当然、ダンパーの新技術開発の評価手段でもあろう。

最後はバスの安全性を向上させるコンポーネンツの説明があり、基本的にはドライバーの負担軽減を目的としている。日本はインフラや労働力条件はドイツに劣るが、安全システム面では日本が進んでいるとの説明はやや意外だった。(しかし考えてみれば、ヨーロッパのプロドライバーの技量は相当に高いと聞くから、安全性はプロの腕がカバーしているのかもしれない)

バス/トラックのハード面での安全性向上コンポーネントの中心は、AT及び構成部品だが、快適性や経済性向上も図っている。サスペンション関連では各種機能付ダンパーによるバス/トラックの姿勢制御(ムービー上映)は、乗心地向上/ローリング防止によってドライバーの負担を軽減し、安全性を向上させることは顕著だ。なお低床バス用コンポーネントに関しては、ヨーロッパより日本の方が床高さはまだ高いというデータが示されている。従って今後国産バスメーカーへのZFのアプローチ力が期待される。

今回のプレゼンテーションはZFジャパンのクラックラウアー社長(経営)、広報の佐々木さん(ZFの歴史)、松田氏(8速/9速AT)、高橋氏(シャシテクノロジィ)、岩田氏(バスの安全性)などから約2時間班をかけて説明していただいた。準備していただいた資料は十分であったが時間的に余裕はなかったのは残念だった。しかし総体的には参加者は満足だったと思われる。

ZFジャパン・ワークショップ風景AJAJの参加人数は22名。場所は新橋東のイタリア街のZFジャパン本社で7月13日(金)14:00~16:30に行われた。

なお、今回筆者は感想文を依頼されたものの、聞き落としや誤解部分があること、余計な書き込み部分があることや、感想文の体をなしていない点はご容赦願いたい。

■参加者(敬称略、五十音順)
有山勝利、石倉敏、太田哲也、岡本幸一郎、日下部保雄、九島辰也、五味康隆、近藤暁史、鈴木健一、鈴木直也、竹岡圭、近田茂、津々見友彦、長嶋達人、中村孝仁、西村直人、伏木悦郎、松任谷 正隆、丸山誠、森野恭行、吉田由美、米村太刀夫