AJAJでは次世代パワートレーンをテーマに主要でメーカーの技術者の話を聞く勉強会シリーズを企画している。第一回目のマツダの金井誠太会長に続き、第二回目はトヨタの内山田竹志会長に話をうかがった。
勉強会のテーマは「初代プリウスの開発」「水素社会の実現を目指して」「カンパニー制への取り組み」の3つに分けられて話が進められた。
内山田会長といえば初代プリウスのチーフエンジニアを担当されたことで著名な人物。今となってはエコカーの代表的な技術となり、世界中のメーカーが採用しているハイブリッドだが、初代プリウスの開発時には技術的なハードルだけではなく、信頼性やコストの面など様々な困難を乗り越える必要があったようだ。
まずは1993年9月に「21世紀のクルマ」という研究会が発足し、翌年2月には内山田会長を中心とした専任プロジェクトがスタート。1995年11月にはハイブリッドを搭載した先々行開発車を完成させるも、初めは49日間動くことなく、その後に初めて動いた時も500mでストップしてしまったという。
その後は急ピッチで開発が進められ、開発中に二度も発売予定が早められるという難題をクリアしながらも、1997年12月には「21世紀に間に合いました」というキャッチフレーズで初代プリウスが発売された。
発売時にこのキャッチフレーズを初めて聞いた時には、随分と余裕を持って間に合わせたものだと感じていたが、開発期間は僅か4年で、さらに発売が前倒しになるなど、実際の開発現場ではジャーナリストの想像を超える苦労があったことを改めて知ることができた。
水素社会の実現に関しては、水素を利用するメリットや今後の展開が解説された。トヨタは世界初の量産型燃料電池車のミライを発売するなど、水素社会の実現に関しては一歩リードしているが、さらにトヨタ環境チャレンジ2050というプロジェクトを立ち上げ、2050年には水素や再生可能エネルギーなどを利用して、工場からの二酸化炭素排出量もゼロにする目標を掲げていることなどが説明された。
カンパニー制の取り組みは、車両のサイズやレクサスなどで区分けされた7つのカンパニーを設けることで、各カンパニーの製品競争力を強化し、意思決定の迅速化が図れるメリットがあることなどが紹介された。
最後には質疑応答の時間も設けられ、初代プリウスの開発時の苦労話や水素社会の今後の展望などにも気さくにお答えいただき、内容の濃い勉強会となった。特に開発から20年を経て改めて聞く、初代プリウスの開発秘話は興味深いものがあった。
内山田会長を始め、勉強会の開催にご尽力をいただいたトヨタ関係者の皆さんに感謝の意を表して勉強会のレポートを締めくくりたい。
■参加者(敬称略、五十音順) |
---|
有元正存/岡崎五朗/岡島裕二/加瀬幸長/桂伸一/川端由美/日下部保雄/菰田潔/佐藤久実/島崎七生人/島下泰久/鈴木健一/鈴木直也/鈴木誠男/高山正寛/滝口博雄/竹岡圭/近田茂/津々見友彦/中村孝仁/西村直人/萩原秀輝/藤島知子/堀越保/松下宏/松田秀士/森川修/山口京一/吉田由美 |