転がり抵抗を減らして燃料を節約、ウェットグリップの性能の向上、はたまた静粛性の向上。タイヤといえば見た目は従来ながらの“黒いゴムの塊”ですが、実は私たちが想像している以上に大きく進化しています。しかもその背景には、素材の配合や結合など、見た目ではわからない分子レベルでの化学分野の発展が大きく働いていて理解しにくいのが現実。私たちモータージャーナリストもしっかり勉強してタイヤの進化を理解しないといけないのですが、目に見ない部分だけにきわめて高度な専門知識が必要な領域です。
そこで、2017年12月18日に横浜ゴム主催によるタイヤ勉強会を開催。同社の平塚工場に隣接した施設に多くのAJAJ会員が集まりました。
当日のプログラム
- ゴムの特徴
- シリカの特徴
- シリカ配合ゴムとブラックカーボン配合ゴムの比較
- 最新のシリカ利用技術
- SPring-8を利用した実験例
- 変形解析技術「FEM」のタイヤ開発への活用最新事情
- 最新タイヤ「BluEarth-air EF21」を紹介
「ゴムの特徴」からスタートした横浜ゴムのエンジニアによるレクチャーは、現代のタイヤには欠かせない素材である「シリカ」の特徴やそのメリットへと繋がり、「シリカを配合するメリット」「カーボンブラック(タイヤの黒さのもと)配合とはどう違うのか?」に発展。今回のために特別に作っていただいた「生ゴム」「シリカ配合ゴム」「カーボンブラック配合のゴム」を手で実際に触って比較するなど、説明にとどまらず実際に体感できる勉強会だったのが印象的でした。
講義は化学分野に留まらず、「SPring-8」と呼ばれる兵庫県にある世界最高性能の放射光を利用することができる大型の実験施設(大型放射光施設)のタイヤ技術開発への利用や「FEM」と呼ばれるコンピューターシミュレーション技術のタイヤ開発への活用など開発の最新事情まで幅広く充実した内容。また、本来なら関係者以外立ち入り禁止であるタイヤの基礎技術開発の実験現場を見学させてもらうなど貴重なプログラムでした。
参加者は最新のタイヤ技術への一層の理解を深め、今後のタイヤ評価が一層研ぎ澄まされたものとなるに違いありません。