2016年11月1日、東京・お台場のメガウェブで「トヨタのConnected戦略」と題し、コネクティッド時代におけるトヨタの取り組みについてのプレゼンテーションが行われた。登壇したのはトヨタ自動車株式会社 専務役員 コネクティッドカンパニー プレジデントの友山茂樹氏。クルマが人や社会と「つながる」技術は今後のコネクティッド社会において不可欠であり、ビッグデータを活用した“つながるプラットフォーム”は自動車メーカーとして重要なビジネス基盤となっていくという。今回のプレゼンでは主にコネクティッドカンパニーの3つの戦略を中心に説明が行われた。
■1つめの戦略「全車のコネクティッド化」
トヨタはコネクティッドカーの取り組みを早期から手掛けており、2002年の車載通信機「DCM」の実用化を皮切りに着手。2005年にはレクサス車にDCMを標準搭載し、2008年には北米と中国に展開した。その後、2011年には地図データの自動更新、オペレーターサービス、緊急通報や盗難追跡といった独自の安心・安全サービスを提供するトヨタスマートセンターを構築した。
現在は道路を走る個々のクルマから収集されたビッグデータを用いて、トヨタ独自のTプローブ交通情報を生成し、渋滞を回避するルートなどを案内している。先の大震災発生時は通行止めや通過可能な道路情報を提供し、救援活動などに活用されたことも記憶に新しい。さらに、個々のクルマの行き先を予測し、ルート上の事故や渋滞をカーナビで事前に通知する「先読み情報サービス」が提供されている。
ドライブをサポートする“つながる技術”は2016年のJ.D.パワーの日本市場におけるナビゲーションシステム顧客満足度調査(自動車メーカー純正ナビカテゴリー)において、量販ブランドではトヨタが1位。ラグジュアリーブランドではDCMを標準装備したレクサスが5年連続で1位を獲得しており、独自のコネクティッドサービスが寄与していると考えられている。
2020年に向けて、加速していくコネクティッド化。トヨタは本格的なコネクティッドカー時代を迎えるにあたり、2016年4月にConnectedカンパニーを設立。各担当役員の下でバラバラに行われていた戦略企画、車載器開発、インフラ開発などの各機能を1つのカンパニーに集約し、コネクティッドカンパニーのプレジデントである友山氏の管理下でコネクティッド商品の開発、ビジネスイノベーション、新事業確立までの一貫した戦略を推進していく。トレンドがもの凄いスピードで変化していく時代だけに、クルマの開発にもスピード化が求められるが、組織が1つに集約されたことでユーザーの期待を超える新しいクルマの価値の創出に期待が高まる。
トヨタは車載通信機「DCM」は2019年までにグローバルで共通化し、2020年までに日米で販売されるほぼ全ての乗用車に標準搭載する予定だ。(その他の主要市場にも順次拡大されていく)。車両の位置情報から国や地域毎に選定した通信事業者に自動接続し、通信状態の監視を総合的に行う「グローバル通信プラットフォーム」をKDDIと共同で構築していく。
また、北米では2016年1月にマイクロソフト社と共同でビッグデータの集約と活用を図る新会社「Toyota Connected」を設立。トヨタビッグデータセンターの運用と得られたビッグデータを活用した研究開発を行い、人工知能の研究・開発を行う機関「TOYOTA RESEACH INSTITUTE」とも密接に連携を図るという。次世代の車載OSはマツダやホンダ、スバル、フォード、日産、ジャガー、ランドローバー、三菱といったOEMを含む80社以上が参画する「AGL(Automotive Grade Linux)」を採用し、連携しながら開発を進める方針。スマートフォンの連携については、フォード社が提唱するオープンソースのSDL(Smart Device Link)を採用する。
■2つ目の戦略「新価値創造とビジネス変革」
コネクティッドカーから集められた情報は日本全国でリアルタイムでフォローしていく。車両から得た外気温やABSの作動状態、車速の変化などから道路が凍結していることなどを判断して、ドライバーに注意喚起を呼びかけることもできる。ビッグデータの活用については、車載通信機から得た情報を元に、ドライバーを充分に理解した人口知能のエージェントが安全で快適なドライブをサポートするサービスを展開していく。
■3つ目の戦略「新たなモビリティサービスの創出」
外部のモビリティサービスと連携できる「モビリティサービス・プラットフォーム」を構築し、タクシーやカーシェア、ライドシェア事業者、保険会社、官公庁、金融などのあらゆる企業やサービスとオープンに連携することで、新たなモビリティ社会の創造に貢献する。
2016年4月に北米において設立した新会社「Toyota Insurance Management Solution USA」は複数の保険会社に向けて、テレマティクス保険に必要な契約者の運転挙動をスコア化して情報提供を行う。ライドシェア事業者との提携については、トヨタとトヨタファイナンシャルサービスがクルマをリースし、ライドシェアのドライバーとして得られた収入の中から、月々のリース料を回収するプログラムを開発。一般客向けのフレキシブルリースについては、米国で2016年12月からuber社と共同でパイロットサービスを開始する。
北米では2020年に個人のカーシェア会員が1000万人に達すると予測されており、安全かつ便利にカーシェアを実現する上で改造コストやセキュリティの面の課題がある。トヨタはクルマを改造することなく、スマホと車両をBluetoothで接続してドアロックの開閉、エンジンの始動を行えるスマートキーボックスの開発を行っていく。このシステムを利用してアメリカのGetaround社と連携したパイロットサービスを2017年1月からスタート。ユーザーがトヨタファイナンシャルサービスからリースしたクルマをカーシェアして、その収入からリース料を回収するリースプログラムも提供される。
日本国内においてはタクシー事業者との連携を強化して、東京都内で500台の車両に通信型のドライブレコーダーを搭載。走行画像や車両データを収集し、ビックデータを解析することでタクシー事業者向けの新サービスや次世代タクシーの開発に活用されていくというが、タクシーをより便利に使えるサービスの展開に期待したい。
■新型プリウスPHVからコネクティッドサービスを開始
また、トヨタのコネクティッドサービスの先陣を切るクルマは2017年に販売されるプリウスPHVとなる。実際に運用される新たなConnectedサービスについて紹介された。プリウスPHVはほぼ全てのグレードにDCMが標準装着されるが、スマホからクルマにアクセスすることで、充電状態の確認やエアコンを車外から操作することが可能だ。
まさに、IoT時代に相応しい「eケアサービス」はクルマの故障や整備の必要性を予知してディーラーに入庫を促したり、警告灯が点灯した時は車両のデータを遠隔診断し、走行可能か否かをドライバーに伝えるなど、その時点で最適なサービスが自動的に生成される。そうしたデータは担当販売店のサービスアドバイザーやセンターのオペレーターに共有することで、リアルタイムでユーザーをサポートしたい構えだ。さらに、クルマの走行データはトヨタ社内の品質管理部署にもフィードバックされ、市場不具合の早期発見や対応にも役立てられる。
最後に友山氏は「24時間、365日、お客様に安心してクルマを利用していただきたい」とコメント。今回のプレゼンでは、クルマを1つの情報端末として役立て、様々な分野と強調することで新たなサービスが展開されることについて紹介されたが、より便利で安全なクルマ社会を実現する上では「つながる技術」はもはや欠かせないものとなっていく。
クルマの所有形態や向き合い方が変化していくことに伴い、ユーザーがクルマを受け止める価値観も変わっていくことが予想される。クルマがもっと便利になっていく時代。その一方で、自動車ジャーナリストである私たちはユーザーや社会にとって必要な要素が何かを考えるだけでなく、家電とは異なるクルマと人の関わり方、また、それらをどのように活用していくべきなのか考え、ユーザーに提案していく立場なのだと改めて実感した。2020年に向けて目まぐるしいスピードで進化しようとしているクルマの技術。今後も目が離せない分野となっていきそうだ。
—— [ 2017年〜2018年のITS分科会メンバー紹介 ] ——
メンバーの任期は2年2ターム(今回は2018年3月開催の総会時まで)とします。
1年1ターム(1ターム目は2016年7月14日~2017年3月の総会まで)として捉え、
そのタームごとに事前に取り決めを行った学ぶべきカリキュラムを消化していきます。
また、2年2ターム(2ターム目は2017年4月1日~2018年3月の総会まで)が、
経過した時点で部会の方向性やあり方を見直します。
※以下メンバー、順不同敬称略
- 片岡 英明
- 佐藤 篤司
- 近藤 暁史
- スーザン史子
- 藤島 知子
- 西村 直人(リーダー)※
上記の6名に、1名分のオブザーバー席を用意して、
合計7名で進めたいと思います。
なお、以下2名もITS分科会出席対象者です。
スケジュールの都合により参加致します。
A.J.A.J会長 菰田 潔
担当副会長 竹岡 圭
※リーダーを務める西村は皆様とお打ち合わせ等を行なう渉外を担当致します。
ご用命は何なりと申し付けください。