旭硝子見学記

合せガラス

合わせガラス製造工程
合わせガラス製造工程

車のフロントガラスに使用される。クラッシュの際、ガラスの小さな破片が飛ばないため、目などを保護する。また、ドライバーが外に飛出さないよう中間幕が押さえてくれるのだ。 これを製造するのには2枚のガラス板をまず、窓の形に切る。この時、アウト側がやや大きく、イン側は多少小さめに切る。

次にアウト側窓にはメーカーの製造マークなどをサンドブラスト(細かな砂を吹きつける)で刻印。

次にアウト側とイン側を一組に合せて、曲げ工程に入る。炉に入れて曲げる時に熱で互いに、くっつかないよう、ガラス板の間にはく離剤を塗るのがミソらしい。

炉は丁度登り窯のような、長い窯の中に入れるが湾曲した鉄の枠に乗せる。そして800度付近の温度の中で、鉄の枠に乗せられ、平らだったガラス板は移動する間に柔らかくなり、自重で型にそって湾曲するものだ。

こうして出てきた2枚のガラスの間に透明で接着力の強い“ポリビニールプチラール”を挟み油圧または空気圧のオートクレープ(圧力ガマ)に入れて120度~130度、約15kg/cmで圧着する。

ところが、この“ポリビニールプチラール”は見ると真っ白。透明ではない。何故?と思うと、実はガラス板を圧着した後間に含まれている空気を真空ポンプで抜くのだが、その空気の流路のために傷をつけてあるからだそうだ。これを熱で圧着した時にはその凹凸は溶けて平らになり、窯から出てくる時には完全な透明になっている。

尚、フロントウインドの上部は濃いグリーンなどのグラディエーションで日除けのためにカラーリングされているが、これはガラスに着色したのではなく、この中間幕に着色されているものだ。

強化ガラス

強化ガラス製造工程
強化ガラス製造工程

5mmの板227gもの鉄の玉を2mの高さから落下させても割れてはいけないことになっているが、実は10mでも割れなかったのには驚いた。このガラスはもし、割れた時には細かくバラバラになり事故の際脱出るメリットがある。

製造方法はやはり、長い炉の中に入れ、ガイドのチェーンに引っ張られて移動するが、ベタっと作業台に乗せるとガラスが溶けた時に、台の模様がついてしまうので、つかないようにその釜の台の部分はゲームセンターの“エアーホッケー”の台そっくりで、下面に多数の孔が開いていて、そこから500度~600度ぐらいの高温の空気を吹き出させ、それによりフローティングさせて流すのだ。 上面からは電気炉のためにヒーターがずらりと並び、この炉内の温度を800度程度に保つ。さて、ガラスを湾曲させるのは、最初の台の部分は平なのだが、ガラス板が温められて流れて行くに従って台の形が徐々に湾曲を始める。ガラスは自重でだんだんとその台の形になじんで湾曲をはじめ、炉の最後の部分では目的通りに湾曲して出てくるのだ。

湾曲したガラスは650度程度に熱せられ、次には常温ながら空気でガラス板の上下面を急冷するので、表は縮もうとして表面に圧縮応力が造られる。このために表面に衝撃などで破壊しようと張力が加わっても、この圧縮応力がその力を打ち消すように働くために破壊されないと言う。 この強度は同じ厚さの板ガラスと比較すると3~5倍の衝撃に耐えられる強度があるとのことだ。

図の中で「マーク打刻」とある部分はサンドブラストで小さな砂を吹きつけてガラスに白く製造メーカー名やその他の情報を打刻する工程。また、「プリント」とあるの自動車用ガラスが枠と接する箇所を外から見えないように黒く縁取りするためにシルクスクリーンでプリントする工程である。

ガラスメーカー御三家

自動車ガラスの製造メーカーは多くはない。国内的に見て、旭硝子(AGC)が58%と圧倒的なシェアを持ち、次いで26%の日本板硝子、14%のセントラルガラス、そして輸入品が2%と言う。

世界的に見ても最も大きいマーケットシェアを持っているのは旭硝子で30%のシェアを押さえ、イギリスのガラスの名門ピルキントンが25%、フランスのサンゴバンが19%、アメリカのPPGが8%、その他が18%となっていて、世界のガラスは3強が押さえていると言えよう。ガラスは装置産業なので簡単に小さな工場が成り立たないためだろう。

ところで旭硝子は世界的な規模から言うと世界1、2位を争っている。板ガラスだけではなく、ディスプレイや科学薬品なども含めて連結の売り上げは1兆300億円を越えると言うから巨大企業だ。自動車ガラスの取引先は、ほとんどの日本車メーカー、そしてダイムラー・クライスラー、現代、起亜、フォード、ボルボ、VW、PSA、BMW、GM、フィアットなど大手を押さえている。

着色ガラスはこうして造られる

最近、UVカットガラスや、プライバシーガラスと呼ばれる着色ガラスがデザイン上のかっこ良さも含めて多く使われるようになっている。ブロンズ系、グレー系、グリーン系等があるが、このカラーガラスは顔料を入れて着色しているものか、と、思っていたら実はそうではなかった。

ガラスの素材に“金属イオン”を溶かしているのだそうだ。元々ガラスは無色透明なもの。つまりあらゆる光の波長をそのまま通す性格を持っている。このガラスに“金属イオン”を混ぜると“金属イオン”が可視光線のある部分の波長、例えば“赤から黄色”ぐらいまでの波長を別の波長に変更してしまう。そこで“赤から黄色”の捕食の色が残りそれが人間の目に入るのだ。この場合は青色になって出てくる。人間には青い色のガラスに見えるのだ。混入する金属イオンの種類や混入の量などで色々なカラーガラスになるのだそうである。