2019年12月17日(火)、横浜ゴム平塚製造所において、タイヤ技術勉強会が開催されました。横浜ゴムにはAJAJ会員を対象とした勉強会を年に2回ペースで開催していただいております。年に1度は実走行をともなう勉強会ですが、今回のものは神奈川県にある同社の平塚製造所においての座学勉強会となりました。
今回のテーマは2種用意されており、最初は「シリカ配合技術」についての勉強会となりました。お話をして下さったのは横浜ゴム 先行開発本部材料機能研究室の網野直也室長です。
タイヤの原材料としては、誰もが思い浮かべるのがゴムです。ゴムの特徴は伸ばして元に戻ることですが、ゴムはそれだけでは弱く少し伸ばすとすぐに切れてしまいます。そのゴムを強くするのが、硫黄とカーボンブラックと言われる黒炭です。現代のタイヤはこのカーボンブラックの代わりとして「シリカ」を使用しています。シリカを使用することで、ウエット性能と燃費性能を向上することができますが、ゴムにシリカを均一に配合することはとても難しく、それを制御することができているので、横浜ゴムのタイヤはウエット性能と燃費性能の両立が図られているとのことでした。
タイヤが黒いのはカーボンブラックが配合されてるからです。現代のタイヤはカーボンブラックを抜き、シリカだけで製造することも可能ですが、クルマのデザイン的にも黒が望まれていて、現代でもタイヤは黒いままです。カーボンは電導性を持っているため、クルマで発生した静電気をタイヤを通じて地面に逃がすことができますが、シリカ配合率が高いタイヤは伝導率が落ちてしまうため、タイヤに導電スリットと言われるアースを取り付け、静電気を積極的に逃がしていることも紹介されました。
2つ目のテーマは「スポンジによる空洞共鳴音の低減について」でした。担当して下さったのは横浜ゴム 研究先行開発本部 研究開発部の池田俊之主幹です。タイヤからはさまざまなノイズが発生しますが、なかでも300Hz前後の空洞共鳴音と言われるノイズについては、ヘルムホルツレゾネーターと言われる逆位相の共鳴音を発生させて打ち消すほか、スポンジなどの多孔質のもので吸収する方法が効果的だと言います。ヘルムホルツレゾネーター減衰するにはホイール側への装着が必要で、設計も手間が掛かるといいます。
横浜ゴムではブルーアース・ワン EF20(195/65R15の1サイズのみ設定)にのみスポンジ製の空洞共鳴音低減機構を採用しています。タイヤの内側にスポンジを取り付けることで、空洞共鳴音はほとんど消失させることが可能となるとのこと。スポンジでの吸音は多孔質の空隙を音がとおり抜けるときに空気の粘性によって摩擦が生じて減少する、音のエネルギーの一部が骨格の振動エネルギーに変換され減衰するなどがメカニズムで、そのノイズはほとんどが消失可能だということを説明されました。
■参加者(敬称略、五十音順) 16名 |
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内田俊一/太田哲也/片岡英明/桂伸一/日下部保雄/工藤貴宏/斎藤聡/塩見智/鈴木直也/高山正寛/松田秀士/森川オサム/桃田健史/諸星陽一/米村太刀夫/吉田由美 |