SkyDriveオンライン勉強会 2020年7月22日

日時: 2020年7月22日
開催: オンライン
SkyDrive(スカイドライブ) 有人ドローン

“空飛ぶクルマ”の取り組みをオンラインで知る

2020年7月22日、AJAJにとって初となるオンライン勉強会が開催された。ちょうど世間では、1日あたりのコロナ感染者数が過去最高を記録する街が散見され、「コロナ禍の第二波が到来か?」と言われるタイミング。ある意味、オンラインでの開催は、時節柄にあわせた当然の対応と言えるだろう。また、オンライン開催は、移動なく自宅から気軽に参加できるというメリットもある。この日のテーマはクルマとは一線を画す内容であったが、それでも約20名という参加者の多さはオンラインならではというところもあったはずだ。

今回の勉強会はSkyDrive(スカイドライブ)社の取り組みを聞くというもの。こちらの会社は”空飛ぶクルマ”であるSkyDrive(スカイドライブ)を開発するために2018年に設立されたばかりの、いわゆるベンチャーだ。SkyDrive(スカイドライブ)は、クルマではなく、言ってしまえば人を乗せることもできる電動ドローン。電動ドローンを空のクルマのように使おうというわけだ。

実際に筆者としては、こうした人も乗せられるドローンは、海外のモーターショーなどで現物を何台か目にしている。屋内展示場を飛ぶのを見たし、乗客席に座ったこともある。ある程度は理解したつもりであった。しかし、今回の勉強会を通じて、それは勘違いであることに気づいた。というか、自分の有人ドローンの認識は、まったくの誤りであったのだ。

“空飛ぶクルマ”に対する間違っていた認識

SkyDrive(スカイドライブ) 有人ドローン
まず、最大の誤りは「ドローンに人が乗るなんて危なくて仕方ない」という思いだ。これまで何度も有人ドローンの展示を目にしたが、そのたびに「こんな危ないものの実現化なんてありえない」と思いこんでいた。小型ドローンが突風で吹き飛ばされたり、墜落するのを見たことがあったからだ。実際のところ有人ドローンが墜落すれば、もちろん大ごとだ。しかし、落ちなければいいのだ。

SkyDrive(スカイドライブ)社では、ドローンの開発を航空機と同じプロセス、同じ思想で進めている。オモチャではなく、旅客機のひとつとして開発しているのだ。航空機開発は、長い歴史があり、その結果、現在の航空機は、地を走るクルマよりも、よほど安全性が高くなっている。事故率は圧倒的に航空機の方が少ないのだ。それは問題が発生しないように、技術的な厳しいルールや制度が数多く用意されているからだ。そして、そうした航空機のレギュレーションの下に開発される有人ドローンは、現在ある航空機と同じ安全性を手に入れるだろう。そうでなくては空を飛ぶことが許されない。つまり、有人ドローンは危険ではないのだ。

次の思い違いは普及に関する予測だ。有人ドローンの話を聞くたびに、「すでに交通インフラは足りており、有人ドローンの必要性なんてあるのか」と思っていた。ところが、それも違っていた。有人ドローンには数多くのメリットがあったのだ。旧来のヘリコプターに対して、電動のため「静か」で「低コスト」である。さらに「操縦が簡単」で、「自動化も可能」だ。垂直離陸できるので、滑走路などがなくてもいい。「インフラ設備に左右されない」というメリットがあるのだ。そのため、こうした有人ドローンなどの「e-VTOL(垂直絵離陸できる小型航空機)」や「アーバン・エア・モビリティ」は2040年ごろには世界で170兆円もの市場規模になるという予測もある。

そんな動きに対して、日本でも、経済産業省と国土交通省が共同で「空の移動改革に向けた官民協議会」を開催し、ロードマップをまとめている。「空飛ぶクルマの事業化は2023年」という目標が掲げられているのだ。

また、「有人ドローンの実用化なんて夢のまた夢。ずっと先の話」だと思っていたが、これも間違いだった。国が掲げる目標は「2023年の事業化」であったのだ。もうすぐその先なのだ。

SkyDrive(スカイドライブ)社は、2019年12月、つまり、すでにカーゴドローンの予約を開始。2020年5月に販売をスタートしている。これは無人機で、30㎏ほどの荷物を運ぶことができるもの。2022年には進化版をリリースし、2025年には本格的に世界市場に向けて量産化しようという。また、2020年8月に有人機のデモフライトを実施。2023年のタクシー事業のサービスを開始したいという。目標に向かって着実なアクションが存在していたのだ。

注目されるだけでなく多くの支援も集まる

最期に驚いたのは、SkyDrive(スカイドライブ)社に対する期待の大きさだ。同社はもともとトヨタのエンジニアによる有志団体としてスタートしている。同社の代表取締役である福澤和浩氏もトヨタ出身者だ。その伝手があったといえ、SkyDrive(スカイドライブ)社を支援するスポンサーの顔ぶれがすごい。トヨタだけでなく、ダイハツ、豊田自動織機、トヨタ東日本といった関連会社。さらにアイシンやデンソー、ジェイテクト、ヤザキといったクルマ関連のサプライヤー。また、NECやパナソニック、東京海上日動、DNP(大日本印刷)といった、クルマ以外の企業も並ぶ。そうしたスポンサーの数は100社を超えており、資金面での苦労は少なそうだ。また、開発機を飛ばすための飛行試験場の提供などの支援も存在する。こうしたスポンサーの多さは、トヨタに対する忖度という範囲を超えており、それだけSkyDrive(スカイドライブ)社の大化けを期待するところが多いことの証明だろう。「有人ドローンなんて、海のものとも山のものともわからない。誰も信用しないだろう」という思いも間違いであった。

“空飛ぶクルマ”は、今のところ夢物語かもしれないが、10年後、20年後は、ごく当然の存在になる可能性は大きいというわけだ。

ちなみに、SkyDrive(スカイドライブ)社の代表である福澤氏に「有人ドローンには、操る楽しさがあるのか? それがないと面白くもなんともない」と質問してみた。すると福澤氏は「アグリー(その通り)」と即答。自動運転の公共交通という側面だけでなく、「操る楽しさも大切にしていきたい」との言葉もいただけた。”空飛ぶクルマ”を自分の手で操れる。そんな未来であれば、一刻でも早く訪れてほしいと思うばかりだ。