AJAJの勉強会に初めて参加させて頂きました。講師の竹内純子さんは東電出身ということで、エネルギー供給側の視点でのエネルギーおよび温暖化問題を学ばせて頂き、様々な知見を得ることができました。
中でも、特に印象に残ったポイントが2つあります。第一のポイントは、よく考えれば当然のことなのですが、エネルギーは贅沢品ではなく貧しい人にも必要不可欠な生活必需品であるということです。特に電気は生活する上で最も重要なエネルギーで、場合によっては人の生死にもかかわるものです。従って、電気代はリーズナブルなものでなければならず、また供給が止まることは絶対に避けなければなりません。近年、ドイツでは再エネ化の進展とともに電気代が高騰していますが、その影響を最も受けるのは貧困層です。日本でも電気代は上昇しています。
再エネ発電は完成すればタダで電気を起こすことができ、設備のコストも安くなっているようですが、ドイツの現状を見ると廉価で設置できる場所はどんどん少なくなっている模様です。また、再エネは気候や日照に影響されるため、供給と需要のミスマッチが起こります。再エネ化の進むドイツでは冬季のブラックアウトの危機が迫っているという話もあります。それを解決するには大規模な蓄電施設やバックアップ用の火力発電施設が必要になり、それも電気代の上昇要因になります。日本は国土の特性上再エネのコストは欧州より大幅に高くなることは避けられません。電気代の高騰を避けながら再エネ化を進めるのは極めて困難、という印象を持ちました。
もう一つのポイントは、環境省が2050年にCO2排出量80%削減という目標値を掲げていますが、これがいかに困難かということです。竹内さんがシミュレーションの数字をあげてくださいましたが、最も理想的な仮定でも2050年の削減率は72%というものでした。この仮定は人口の減少(これでエネルギー消費は自然に減る)、すべての自動車のEV化、家庭の給湯等もすべて電化、発電の再エネ化は環境省予測の高位ケース(53%)、という条件のものです。この仮定では原子力は10%に留めていて(現在は5%程度)、火力が依然として35%を占めるというものです。この数字が示すことは、EV化100%を達成し、できる限りの再エネ化を進めても目標を達成できないということです。
この2つのポイントを総合的に考えると、原子力発電を大幅に増やす以外現状の技術では解決策が見えてきません。もう一つの重要な将来のエネルギーである水素の製造のためにも電気が必要です。実際、中国、ロシア、イギリス、アメリカなどでは原発の増設が決まっているそうです。中国では15年で150基の原発を作るとか。既に原子力率の高いフランスでも原発増設の方針となるようです。
日本は理想的に進んだとしても2050年で73%削減にとどまり、カーボンニュートラルにはまだまだ遠い水準になる見込みです。目標達成およびその後のカーボンニュートラルのためには欧州以上に原子力が重要と考えざるを得ませんが、果たして日本で推進できるかどうか。日本国民は厳しい選択を強いられることになりそうです。エネルギー安保という視点でも日本は脱石油を進める必要があります。自動車も発電の脱炭素の進行とともに、EV/FCV化は避けられそうにありません。