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11月19日、東京お台場にあるシティサーキット東京ベイにおいて『ダンロップ』ブランドで知られる住友ゴムが、AJAJ向けタイヤ材料技術勉強会を開催してくれた。
住友ゴムは古くは国産第1号のタイヤを発表したことに始まり、近年ではコンピューターシミュレーション技術によって、ハイドロプレーニング現象の解明やデジタイヤの投入、特殊吸音スポンジをタイヤ内周に装着して、空洞共鳴音を吸収するサイレントコア技術の導入。世界初の100%石油外天然資源タイヤ、エナセーブ100を市場投入するなど、世界や日本初の技術、先進的なタイヤ開発を行なってきている。
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今回の勉強会は、この住友ゴムの最新テクノロジーを改めて紐解いていくもので、2024年10月に発表された、新世代オールシーズンタイヤ『シンクロウエザー』を柱とした要素技術に関するものと、現在進められているサステナブル原材料開発の取り組みに関する2つのテーマで座学が行なわれた。そして、実車体験としては勉強会の会場となった、シティサーキット東京ベイのEVカートにサステナブル素材を43%使ったタイヤを装着しての試走が行なわれた。
開会に際してAJAJ側からは岡崎五朗理事からの挨拶。住友ゴムからはタイヤ事業本部技術本部長兼先行企画開発本部長で常務執行役員の松井博司氏から歓迎のご挨拶を頂いた。
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住友ゴムからは他にタイヤ事業本部企画本部長で常務執行役員の濱田裕史氏、タイヤ事業本部材料開発本部長で執行役員の水野洋一氏の役員3名。技術部から4名、他5名の12名が神戸本社から、東京本社から4名の計16名という対応によって、プログラムは進められていった。
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AJAJ35名の参加者は3グループに分かれて、座学、カート試乗、懇親の3プログラムを交互に行っていったが、各プログラムとも積極的な質疑応答やEVカートによる熱い走り、懇親会では更なる質問をや懇親を深めるなど、日が暮れるまで、内容の濃い時間を過ごした。
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中でも今回の勉強会の柱となる『シンクロウエザー』の基盤技術に関しては、多くの質問が寄せられていた。新世代オールシーズンタイヤのシンクロウエザーは2023年のJMSで発表された『アクティブトレッド』技術を初めて採用し、高速道路の冬用タイヤ規制でも走行が認められるスノーフレークマークや国連規定で定められた氷上性能基準を満たしたアイスグリップシンボルマークも刻印され、スタッドレス同様のアイス性能を可能にした。
アクティブトレッドは天候や路面の変化に合せてゴムの性質を変えるというもので、路面との接触面1mm程度の部分が、水スイッチや温度スイッチによって特性を変化させ、あらゆる環境でグリップ性能を確保するという。
この夢のようなアクティブトレッド技術を採用したことによって『シンクロウェザー』はこれまでオールシーズンタイヤでは有効グリップが得られなかった氷上性能や、ウエット路面での高い接地性を確保することで、サマータイヤとスタッドレスタイヤ両方の性能を身につけた。正に季節を選ばぬ真のオールシーズンタイヤが生まれたのだ。
もっともAJAJは専門家集団であるがゆえに、この水スイッチと温度スイッチに関しては質問が集中。これに対して住友ゴム材料開発本部で工学博士でもある、平山道夫氏が多くの時間を割いてわかりやすい言葉とビデオやスライドを通じて対応。
水スイッチはグリップの骨格を作るポリマー間の結合を、新たに開発されたイオン結合材に置き換えることで、水に接触するとその結合が乖離して、柔らかいゴムに変化。ウエットグリップを高めるという。
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温度スイッチは従来のポリマーがポリマーとグリップ成分が常につながっていたのに対し、新ポリマーではグリップ成分の一部を切り離すことで、低温になるとスイッチが入り、離れていたグリップ成分が性能を確保するというもの。
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どちらのスイッチも温度や水によって、グリップ成分であるポリマーが変幻自在に変化し、正にあらゆる路面にシンクロさせた、魔法のようなタイヤであることがわかった。懇親会を交えて、個別にこの革新技術の理解を深めると同時に『実際に試乗してみたい』という声も多く聞かれた。
閉会に際しては森川理事の挨拶の中、内容の濃い勉強会に対して感謝の言葉とともに、理解は出来ても乗って見ないと実感がなかなか涌いてこない。と言う言葉を受け、住友ゴムの濱田常務執行役員のご挨拶では、今後も商品や技術の理解を深めていただくためにも多くの機会を設けていきたい。というお言葉を頂戴した。
今後の住友ゴムの益々の発展と技術進化、商品展開が楽しみであるとともに、AJAJとの関係が深まることを実感することができた有意義な勉強会であった。
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■参加者(35名、敬称略、五十音順) |
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会田肇/安東弘樹/一条孝/内田俊一/大井貴之/太田哲也/大久保力/大音安弘/岡崎五朗/岡本幸一郎/片岡英明/桂伸一/川島茂夫/日下部保雄/工藤貴宏/斎藤聡/斎藤慎輔/佐藤篤司/佐藤久実/佐藤耕一/塩見智/鈴木健一/鈴木直也/瀬在仁志/高根英幸/高山正寛/滝口博雄/中村孝仁/松田秀士/まるも亜希子/丸山誠/諸星陽一/森川オサム/山城利公/吉田由美 |