運転姿勢とSRSエアバッグの関係
[安全運転スクールの現場から]
現場では、運転席用SRSエアバッグと身体の位置関係について質問を受けることが多い。適切な運転姿勢に合わせると、とくに小柄な人にとってはSRSエアバッグと身体との距離が接近しすぎるように感じるからだ。現実に、SRSエアバッグ(ステアリングパッド)と身体との距離が一般的に許容範囲とされる25cm(10インチ)以下になる例も少なからず確認している。この場合、SRSエアバッグが展開するとその加害性によって致命傷を負うことも考えられる。だが、SRSエアバッグが展開するような大事故を未然に防ぐためには、適切な運転姿勢をとることが不可欠となる。したがって、適切な運転姿勢とSRSエアバッグによる加害性の両方を提示し、受講者に選択を委ねている現状がある。ちなみにアメリカ車の一部には、適切な運転姿勢をとることよりもSRSエアバッグから離れることを優先する説明がマニュアルに記載されている。
また、SRSエアバッグの展開を踏まえ、送りハンドルで運転したほうがよいという考え方もある。ただし、ハンドル操作の方法については危険回避の可能性の高さともかかわるため、ここでは結論を導きだすことはできない。
[今後の改善に向けて考えられる課題]
1.SRSエアバッグの加害性低減
シート位置や衝突スピードによってSRSエアバッグの展開速度を変化させるなど、加害性を低減する技術開発を早急に進める。
2.クルマ選びを考える
多くの場合、クルマの開発に際してAM90(アメリカ人の成人男性の90%が含まれる体格)か、日本専用車でもJM90(日本人成人男性の90%が含まれる体格)を前提として運転姿勢が設計されている。そのため、とくに小柄な女性にとっては、そもそも適切な運転姿勢がとれないクルマが存在する。そうしたクルマを選ばないようにするといった、情報を伝えることも必要である。
3.補助シートの開発
上記(2.)を踏まえて適切な運転姿勢がとれない人のために、大人向け補助シートの開発が望まれる。プジョーが用意している「超長身者用シートレール」でヘッドクリアランスを確保するようなオプションを参考に、その反対の「小柄体格用」を用意してもいいのではないか。
今回は、運転操作の現実とSRSエアバッグの関係についてまとめた。他にも参加した会員はさまざな経験を持つため、AJAJ安全部会として機会を改めて意見交換を行い、その内容をまとめていきたいと考えている。