ダイハツ触媒勉強会

開催日:2006年8月23日
場 所:東京・大手町

8月23日、眺望のいい東京・大手町の高層ビルでダイハツ工業主催の「AJAJ 触媒勉強会」が催された。ダイハツは自動車触媒の分野でリーダー格となっている。早くから触媒の研究に取り組み、 2002年には排出ガス浄化機能を持つ貴金属のパラジウムに自己再生機能を持たせ、超低コスト化を実現した『インテリジェント触媒』を発表した。この基本コンセプトを発展応用させ、パラジウムの自己再生時とはまったく違う新しい材料での組み合わせにより、白金とロジウムにも自己再生機能を与えることに成功している。これが05年秋に発表した『スーパーインテリジェント触媒』だ。

時代の最先端をいく触媒技術は、自動車以外の産業分野への応用も考えられている。ダイハツは北興化学と協力し、医薬品の製造分野への用途開拓にも乗り出した。このように触媒の未来は明るいが、この手のメカニズムや特徴についてはあまり表立って知られていない。そこで今回の勉強会となったわけである。講師を務めてくださったのは、ダイハツの先行技術開発部に籍を置く田中裕久さんだ。

大石弘之氏、田中裕久氏
今回の勉強会を手配していただいた広報部長の大石弘之氏(写真左)と、魅力的なお話しを数多く語っていただいた田中裕久氏。

学校の授業でも同じだが、先生の授業の進め方によって聴講する者は、興味をもつことがあるし、興味をそがれることもある。田中さんは若い頃に世界中を旅していた。そのときの体験談を随所に交えながら、触媒の話を進めていった。このユニークな授業形態を取ることにより AJAJ のメンバーは話に引き込まれた。触媒の話はかなり難しく、化学用語もここかしこに登場する。が、巧みな話術と面白さに引き込まれ、受講者を飽きさせない。

講義は田中さんがサハラ砂漠を越え、チュニジアに行ったときの話から始まった。皆、話の続きを催促するような眼差しになる。これに続く、自己再生できる触媒のペロブスカイト型構造の話は、ハリーポッターの不老不死の賢者の石を引き合いに出して解説した。 今回の勉強会を手配していただいた広報部長の大石弘之氏(写真左)と、魅力的なお話しを数多く語っていただいた田中裕久氏。

聴衆を話の中心に一気に引き込み、軽自動車の触媒の難しさやスーパーインテリジェント触媒の特徴を語る。だが、ここでも西洋と東洋の健康観やサンキヤ哲学の話を出しながら、触媒の効能をわかりやすく解説してくれた。

ナノテクの極致と言えるスーパーインテリジェント触媒の凄さと今後の可能性を再確認させられたのが、この勉強会だ。だが、研究開発の進め方や長所を伸ばす発想など、化学以外の話でも得るところが多かったのが大きな収穫だったと思う。話に引き込まれ、アッと言う間に2時間の講義は終わった。続編を聴いてみたいと思わせるほど楽しい勉強会だったことを報告しておこう。