5月26日(月曜)、AJAJ会員を対象としたNEXCO中日本主催の新東名視察・意見交換会が行われた。
NEXCO中日本(中日本高速道路株式会社)は2005年の日本道路公団分割民営化の際に設立され、東海/北陸地区の高速道路の管理/運営を行っている。現在、施工中の業務には2020年に全面開通を目指す新東名の工事も含まれており、今回は2012年までに開通を予定している御殿場JCT~三ケ日JCT間の一部を、数ヵ所にわたり、視察させていただいた。視察後には意見交換も行っている。
現在の東名高速道路が駿河湾に沿ったルートであるのに対し、新東名はより富士山に近い山側を通るルートとした。そのためなのか、橋やトンネルなどの構造物の比率が高いのだそうだ。視察では最新の建設技術について説明を受けながら、代表的なトンネルや橋、パーキングエリアの予定地などを見て回った。
富士工事事務所が担当するのは、第二東名高速道路のうちの富士市、富士宮市、富士川町、芝川町の2市2町を通る延長約24.4km。そのうち構造物比率は全体の約6割である。視察した主な構造物は、トンネルが第二東名のなかで2番目の長さとなる富士川トンネル(延長約4.5km)、橋梁では管轄内でもっとも長い富士高架橋(延長約2.6km)、鋼・コンクリートの複合アーチ橋としては世界一となる富士川橋(アーチ支間長265m)などがあった。
神奈川・静岡県境から富士・沼津市境までの第二東名高速道路の約40kmを担当している沼津工事事務所では御殿場~沼津間の22kmほどの区間が、23の橋や高架橋、それに7つのトンネルで繋がる予定だ。そのなかにはトヨタ自動車の東富士試験場の下を通る今里トンネルがあり、未完成ながら開通はしている。このトンネルを視察(通過)中、「この上でトヨタは今、どんなことをしているのだろう」などと考えたら、ちょっとワクワクした。晴れて新東名が開通すれば、ここを走るたびにワクワクできるというマニアックな楽しみもある。橋の建設では、これまでよりも細い橋脚ながら剛性は高く、橋そのものも軽量化が進んでいると聞かされた。建設コストも抑えることができるのだそうだ。すべてではないが、トンネルも世界最大級のトンネル・ボーリング・マシンの採用や形状の工夫などにコストと掘削時間が短縮されている。それらはいずれもコンピュータ解析技術や資材の進化によって可能になった。より早く、より合理的に、安全な構造物を作ることができるようになっている点、これはクルマと同じだと思った。
現在の東名高速道路は昭和44年(1969年)に全線開通した。当時の設計者たちは、現在の、このような急激なクルマ社会の発展を予測するのは不可能だったのだろう。21世紀になったら、クルマも空を行き交う世の中になっている、と未来を想像していたのかもしれない。私みたいに。現実には大きな台風がやってくるたびに区間閉鎖される由比PA付近や東海大地震の対策、東西の流通網の拡大や交通集中による渋滞、交通事故対策など、現在の東名が抱えている問題は多い。また、担っている責務も大きい。
ちなみに現在の東名と新東名を比較すると、海老名~神戸間の移動距離はマイナス53km。所要時間は約1時間も短縮されるそうだ。新東名は風光明媚な山間ルートであるにも関わらず、急カーブや急坂が少なく、路肩も広い。安全で経済性にも優れるルートとして大いに期待が持てる。
実際に視察した我々は、さらなる期待を抱きつつ意見交換会にのぞんだ。そこでは、たとえば岡崎五朗さんは「制限速度域を現在の100km/hから120km/hにできないのか?」と質問。担当者からは「法の枠組みでしか私たちは動けません。皆さんの理解を得ながらやっていきたい」と後ろ向きのようで前向きな答えが返ってきた。発言に慎重な様子。個人的にも視察中に「道路に磁器のようなものを埋め込んで路車間通信をする予定はないのか?」と、質問してみたところ「今のところない」と言われた。この点については自動車メーカーとの連携も必要だから安易な発言はできないのだろう。車?車間通信の進化にも注目だが、今後の新たな路車間通信にも目を向けていきたいと思った。法律も見直されるといいと思う。
今回、このような特別な機会をいただいた私は、NEXCO西日本の担当者の方々から「まだ公表できないけれど…」的な第二東名の秘密を打ち明けてくれるのではないか、と期待していた。が、それはなかった。しかし、視察&意見交換会はわかりやすく、丁寧な説明が印象に残る。会員たちの質問に、可能な限り答えてくださったことにも感謝している。そして田舎育ちの私としては、自然体系が大きく変わってしまわぬことを願うとともに「建設予定を一日でも早くしていきたい(確かに工期は短縮されつつある)」と何度もおっしゃるNEXCO西日本の関係者の方たちの安全で、正確なお仕事を願っている。