4回にわけてタイヤの知識を身につける予定で開催されている、ブリヂストンによるタイヤ勉強会。2回目となった今回のメインテーマは、「ブリヂストンの環境への取り組み」だ。直前に発表された低転がり抵抗タイヤ「ECOPIA EP100」を中心に座学と試乗、午後にはタイヤ評価に関しての講義と同乗走行が行なわれた。
企業姿勢についてのプレゼンテーションでは、ブリヂストンがこれまでに行なってきた環境経営について整理された。過去には、公害防止の観点にたって、地域レベルの環境汚染問題から、グローバルな規模での海洋汚染や酸性雨などの問題に取り組んできたが、昨今では、地球温暖化防止や化石燃料や天然資源の枯渇といった方向へと進んでいる。具体的には、持続可能な発展のための世界経済人会議への参加を通して、タイヤ業界全体として取り組むべき課題を検討しており、タイヤに含まれる物質の人体および環境への負荷を評価している。また磨耗粉塵の影響など、これまで目が行き届かなかった細部への評価も進めている。
また今回発表された低転がり抵抗タイヤ「ECOPIA EP100」のような製品を通しての環境問題への取り組みにも注目したい。タイヤにおける取り組みとしては、省資源、低転がり抵抗タイヤの開発によるCO2削減の2点が大きな柱となっている。特に後者については、自動車業界からの期待も大きく、今後、注目される技術分野だ。同時に、タイヤのライフタイムにおけるCO2排出量を見ても、製品使用段階、つまりクルマにつけて走らせている段階でのCO2排出量が87%と最も比率が高い。
すでにトラックやバスといったフリートで実用化されている「ECOPIA」シリーズだが、今回の発表は乗用車に向けたもの。「B’Style-EX」と比べて、約30%もの転がり抵抗が低減できる。実際、テストコースでの実験では、同じ型のクルマに「B’Style-EX」と「ECOPIA EP100」を履かせて、斜面を自然に転がらせた場合、前者が50kmより手前で停止したのに対して、後者は70km程度まで走行した。もちろん、転がり抵抗は下げても、タイヤの基本性能であるグリップ力は落としていない。
機構について簡単にまとめると、タイヤ内部での発熱の低減する材料配合を開発し、タイヤの変形によるロスの少ない構造の両面から低転がり抵抗タイヤを開発している。具体的には、補強材として使われているカーボンに代わってシリカを使うことで内部での発熱を低減。またナノテクノロジー応用して、ゴム、補強材、フィラーといったコンパウンドの構成要素をより均一に分散させることに成功した。
午後にはタイヤの評価についての座学と実地が行なわれた。テストドライバーの養成について、一定の速度で走ったり、乗り心地などの性能や車両の挙動を観察する能力だけではなく、官能として現れる部分をいかに表現するか、また新しい性能を想像していくか、といった感性に訴える部分を数値化していくこともドライバーの重要なスキルだという。またテストコースにて行なわれる試験の見学では、80km/hで蛇行走行したときの騒音レベルの測定、水深6mmでのハイドロプレーニング現象の発生、高速集回路の同乗走行などを通して、タイヤ開発段階での課題を知った。
今回の勉強会を通して、タイヤ開発においても地球環境問題への対応が重要な役割を占めるようになっていることを知った。京都議定書の約束開始年にあたる今年、世界中の企業がCO2削減するために努力を重ねている。すでに欧州では、自動車メーカーごとの排出量を140g/km以下にする自主約束があり、2012年には目標値が120g/km以下となり、罰則も検討されている。ただし、自動車だけで130g/kmまで低減し、残りは自動車以外、具体的にはタイヤと燃料に課せられている。世界各国の自動車メーカーにタイヤを供給するブリジストンでも、当然、取り組まなくてはならない問題となっているようだ。