日産クオリティ・リーダシップ勉強会

開催日:2009年1月21日
場 所:日産テクニカルセンター

去る1月21日、本年初となるAJAJ勉強会が開かれた。今回の内容は、日産「Quality Leadership(クオリティ・リーダシップ)」についてである。

日産「Quality Leadership」は、昨年5月に発表された2008年から2012年までの5年間にわたる中期計画「日産GT2012」の中のひとつとして明記された項目だ。それは商品そのものはもとより、設計、開発、生産、営業、アフターサービスなどを含め「品質領域でリーダーになる」という大命題である。(「日産GT2012」の一部の目標は、国際的な経済情勢の悪化からこの2月に一時中断が発表されたが、「Quality Leadership」に関して変更はない)

当日は、その拠点となる神奈川県厚木市の日産テクニカルセンターにあるフィールド・クオリティ・センター(FQC)にお邪魔し、「日産自動車における品質の取り組み~Quality Leadership」の解説を拝聴。その後、センター内を見学し、不具合の解析やサービスの向上に携わる現場を見学させていただいた。

FQC館内に掲示されている「FQC設立趣意」には、「品質はブランドの基礎」「品質改善に終わりなし」「品質改善に王道なし」「FQCは品質改善の聖地」との4項目が掲げられていた。

日産FQCの設立趣旨”聖地”との表現に志の高さを感じてしまったが、その聖地は現在、アメリカに2カ所、ヨーロッパに1カ所、そして日本を合わせた計4カ所ある。各地域ごとの要求の違いはあるものの、品質レベルに関してはグローバルな基準をおいてレベルアップを図っているという。

加藤和正常務執行役員
プレゼンテーションをしていただいた加藤和正常務執行役員

Quality Leadershipは、「感性品質/魅力品質」「製品の品質」「営業・サービス品質」「マネジメント品質」という4項目を基本に品質領域でのリーダーになることを目指している。

このうち感性品質とは、ユーザーが製品を見て、触って、使って感じる良さのこと。昨年日本にも投入された新型ムラーノは最近の成果事例のひとつで、アメリカではユーザー評価(社内評価)で1位となったという。

また製品の品質とは、ユーザーがクルマ、ブランドを選ぶ上で影響のある指標のこと。興味深いのは、その指標をアメリカのコンシュマーレポートを始めとした外部メディアの評価によって達成度をはかっていることだ。

また、影響のある指標のひとつであるブレークダウン(ユーザーが走行不能と判断した路上での不具合)はヨーロッパで特に関心が高いそうだ。外部指標メディアのひとつに含まれるドイツのADACでは、各ブランド、各モデル別にロードサービスを受けた件数を発表している。日産ではこのブレークダウンを2%以下に抑えることを目標とし、ヨーロッパの主要国を中心にブレークダウン情報のモニタシステムを開発するなど、2010年の達成を目指しているという。

FQC関係者の皆さん
個別の説明をしていただいたFQC関係者の皆さん

このほかQuality Leadershipに関わるさまざまなお話を伺ったが、ひと口に品質の向上とはいっても実に多種多様なアプローチが不可欠であること。それに対して真摯に目を向け、難問、課題に対峙していることに感銘を受けた。FQC設立趣意にある通り、まさに終わりなし、王道なしである。

さて、見学させていただいたセンター内には、実際の走行状態を模して不具合箇所を特定するための実車調査エリア、部品毎の解析を行う部品調査エリアといったいくつかのセクションがあった。

各エリアにはシャシーダイのような装置や解析を行うための専用のテスターなどがいくつもあり、実際の解析状況をデモしていただいた。その際、それらの装置自体に強い興味を示す会員もおり、なるほどメカ好きにはなにかと興味深い場所である。

プレゼンテーション風景
プレゼンテーション風景

一方、大がかりな装置は見当たらずテーブルだけが置かれた部屋も。ここはメーカーの設計、開発、生産の担当者や部品サプライヤーのスタッフが合同で不具合の解析を行う場であった。実車調査を行う「現場」、「現物」の解析、これまでに蓄積された不具合の統計データに基づいた「現実」。この「三現主義」による合同解析は、市場品質調査解析(FQIA)に欠かせない活動だという。

たとえば部品単体ではなんら問題がない場合でもクルマに組み付けると不具合が生じるケースなど、問題箇所や原因を特定しにくい場合がままある。そうした際に各専門分野の担当者が集まり、各自の知識、経験、ノウハウなどからあらゆる可能性を導出する。そうすることで原因の特定や解決の糸口が見つかるケースが少なくないようだ。そして、このようにして集められたものはすべてデータベースとして蓄積され、不具合の案件、原因、解決策などがサプライヤーを含め、各セクションのスタッフに共有化される。そのため後に発生する同様の事案の解決はもとより、類似の案件に対しても大きな成果を得ているという。さらに今後の開発、生産の場にもフィードバックされ、より信頼性の高い部品、製品の開発へとつながっているそうだ。

もとより日本車は、その品質の高さが評価され国際マーケットでも高い評価を得てきた。だが、そうした過去に甘んじることのない品質向上への飽くなき探求があるのだということを、この度の勉強会を通して改めてうかがい知ることが出来た。かような貴重な機会を与えてくださった関係者の皆さまに心より感謝したい。