ボッシュESC&クリーンディーゼル勉強会 ESCと先進技術編

掲載日:2009年1月30日〜31日
場 所:ボッシュ株式会社 栃木工場/塩原試験場

=初日の座学はESCの普及状況など=

1月30日から31日の2日間、ボッシュ株式会社の栃木工場及び塩原試験場において、ESC&クリーンディーゼル勉強会が行われた。ドイツに本社を置くボッシュは、世界最大の自動車部品サプライヤー。日本の自動車メーカーにも数多くの部品を供給しており、日本にもいくつかの開発拠点を設けている。今回勉強会を開催していただいた、栃木工場や塩原試験場は横滑り防止装置のESCやABSの開発や生産拠点となっている場所だ。

31人の会員が参加した今回の勉強会は、初日は栃木工場においてESCを中心とした先進自動車安全技術の説明会を受講し、翌31日は塩原試験場において実際にESCの効果を体感するための試乗や、日本には導入されていない駐車支援システムなどを体験させていただいた。

初日の説明会ではESCの各国の普及の実態や市場環境について、ボッシュマーケティンググループのアレクサンダーミュラー氏からの講義を受けた。横滑り防止装置のESCはクルマがアンダーステアやオーバスステアになりかけた時に、4輪に個別にブレーキを掛けたり、同時にトラクションコントロールを作動させてクルマの挙動を安定させるシステムで、アクティブセーフティに絶大な効果を発揮してくれる。ESCを装備することで、3割から5割の交通事故の低減効果があるといわれている。

しかしながら日本での装着率は欧米に比べて極めて低く、2007年に日本で製造されたクルマの27%にESCが装備されていたものの、国内市場向けは約半数となる14%でしかなかった。すでに欧州での新車への装着率は半数を超えており、米国とオーストラリアでは2011年から義務化され、2012年には欧州でも新型車から義務化される動きがある。

日本では高級車には標準装備されている車種が増えてきたが、小型車にはオプションですら用意されていないことが多い。その点については我々モータージャーナリストが率先して自動車メーカーに装着を働きかけ、いずれは義務化の方向に向かうようにしていかなくてはならないだろう。そう思わずにはいられない、深い内容の講義だった。

 

=2日目のはテストコースの試乗で確認=

翌日は塩原のテストコースにて実際にESCの効果を体感させていただいた。テストドライバーの運転するクルマに同乗して高速からのダブルレーンチェンジを行ったり、自らハンドルを握り、雪道に近い滑りやすい路面でのスラローム走行を行った。どちらの走行でもESCをオンの状態とオフの状態ではクルマの挙動に大きな差があり、オフにした状態では腕自慢のモータージャーナリストでもクルマをコントロールするのが困難な状況になる場面が多く見られた。

だが、ESCを働かせながら走れば余裕を持ってドライブすることができ、クルマを行かせたい方向にスムーズにコントロールすることができた。ABS同様にESCも一度体感してしまうと手放せなくなるほど、アクティブセーフティに貢献しているシステムであるということを再認識させられた。

駐車システム体験
駐車システムは両手を離した状態でOK

この日はESCの体感試乗のほかにも、超音波センサーが採用された駐車支援システムやアダプティブクルーズコントロールも体感させていただいた。この中でも駐車支援システムには非常に優れたシステムだった。いくつかの国産車にも同様のアイテムが装備されているが、ボッシュのシステムは細かく駐車位置を設定する必要がなく、前進と後退のアクセル操作を行うだけ、タイトなスペースにも縦列駐車ができてしまうのだ。欧州ではメルセデスベンツのAクラスやBクラスに設定されているが、日本では法規の関係で導入されていないのが惜しい。

ESCはレーダーを用いたドライバーアシスタンスと協調させることで、より事故を起こし難いクルマを開発させることもできる。そのためには、まずはESCの普及が必須となるので、我々モータージャーナリストが積極的にESCの認知度の向上と装着車種の増加に努めていかなくてはならないだろう。改めて、そんな思いを痛感させられた一日だった。