=タイヤは精密部品!=
ブリヂストンのタイヤ勉強会は過去に3回開催されており、この4回目がひとまずの最終回となる。会場は前回と同じく、小平市にあるブリヂストンの東京工場・技術センターだ。今回はタイヤが製品化されるまでに実施される室内試験に関しての講義と室内試験の見学、さらにリトレッドタイヤラーニングセンターを見学する機会に恵まれた。
プルービンググラウンドで行われるテストとは異なり、屋内でのタイヤ試験はとても地味である。製品として最低限の保証(法規制)となる高速耐久性、欧州で要求されるタイヤの単体騒音測定はもちろんだが、自動車メーカーの要求するバネ特性データ、操縦性データ、転がり抵抗値といった基本特性、さらに燃費、乗り心地、操縦性、摩耗性、耐久性といった付加価値にあたる性能も屋内で検証しなくてならない。
今回の講義では近年重要な試験となりつつある「転がり抵抗試験」について、とくに詳しく述べられている。タイヤに精密機械部品といったイメージは結びつきにくい。転がり抵抗の大きさは負荷重量の約100分の1。つまり、1本のタイヤに300kgの重さがかかるとすると、転がり抵抗は約3kg。その転がり抵抗を1%減らしたいと仮定した場合、元の付加荷重の1万分の1(0.03kg)を検出しなくてはならないのだ。これは人を体重計に乗せて大さじ1杯分の砂糖を検出するようなもので、恐ろしく精密な試験が必要になるという。
=省燃費タイヤは困りモノ?!=
具体的に精密な転がり抵抗値をどうやって計るのだろうか。方法は惰行式とフォース式があり、惰行式はタイヤをドラムに押しつけて一定の速度から停止するまで惰行させる方式。これは減速度から転がり抵抗を計算する方式で、精度は高いものの計測には時間がかかるという。いっぽうのフォース式はドラムを一定の速度で回しながらタイヤの軸部分で直接転がり抵抗の値を計算できるという。こちらは短時間で計測できるが、精密なデータを得るには高価なロード・セルが必要だという。ちなみに、ブリヂストンでは惰行式のデータを多くの自動車メーカーに提供しているとのこと。燃費にすぐれたタイヤが増えつつあるのはいいことなのだが、1本のタイヤの試験に30~40分もかかってしまうため、実験部にとって省燃費タイヤは困りモノという余談も披露してくれた。
=F1タイヤも室内でテスト=
タイヤをテストするにあたっては環境や路面の違いも再現しなくてはならない。暑いのか寒いのか、舗装路なのかワインディングなのか、路面がスムーズなのかデコボコなのか、さらに車種や運転する人の違いといった要素も入ってくる。これらを踏まえながら室内試験に落とし込む必要があるとのこと。
タイヤに加わる入力をいかに室内で再現するか? ブリヂストンでは実際のベンチ化技術「Hybrid Indoor Testing Technology」を通して、タイヤ1本1本の荷重、横力、キャンバー角にどんな力が加わったのか再現することができ、あたかも実際の道路を走っているようなデータが得られるという。
路面の要素についても世界各国に出掛けてデータを取ると同時に路面の型取りを行なっている。路面の粗さを数値化し、砂とエポキシで路面の粗さを再現し、タイヤを摩耗させることで摩耗や偏摩耗のテストが行われている。
F1に使われるタイヤも実際に各サーキットを走り、路面の粗さやトレッド部の温度を計測。粗さ、温度が実際のテストに近くなる路面材を選んで室内テストを行っている。トレッドゴムに違いのある場合にはどのような変化があるのか、周回を重ねた走行による“タレ”も室内で評価することができるという。
=リトレッドタイヤ ラーニングセンターを見学=
今回の勉強会では、今年2月に東京工場/技術センター敷地内に開設されたリトレッドタイヤラーニングセンターを見学することができた。リトレッドタイヤとは使用済みのタイヤのトレッド部分を取り除き、新たにトレッドゴムを加硫・圧着して再使用できるようにしたタイヤだ。新品タイヤに対して天然ゴム、石油資源などの原材料の使用量が3分の1以下となるほか、二酸化炭素排出量の削減、廃タイヤ削減にも寄与するなど、環境にやさしいタイヤとしても注目されている。乗用車用の設定はないが、中型・大型トラック&バス、ダンプトラック用としてすでに充実したラインアップを見せている。すでに国内には6つのリトレッドタイヤ工場が稼働しており、2010年にはタイにプレキュアトレッドの新工場が完成する予定となっている。