BASF自動車用塗料勉強会 その1

開催日:2009年11月26日
場 所:BASFジャパン東京本社 会議室

BASF自動車用塗料勉強会 講演風景2009年11月26日に、BASFコーディングジャパンの協力により自動車用塗料に関する勉強会が開催されました。BASFコーティングスグループはドイツに本社を置く世界最大の総合化学メーカー「BASF」の塗料事業部門。BASFコーティングスジャパンは、BASFコーティングスの日本及びアジア太平洋地域の主要拠点であり、自動車用塗料、自動車補修塗料、工業塗料の3部門で活動しています。

当日は17名のAJAJ会員が参加しました。エンジニアとして自動車用塗料の研究開発を勧めている間下光行さん(BASFコーティングジャパン研究開発本部本部長)が講師を勤められ、自動車用塗料と塗装についてご教授をいただきました。

普段はほとんど見聞する機会のない塗料に関しての知識を深めることができ、有意義な勉強会でした。試乗会などで塗装を真剣にチェックしているAJAJ会員がいたら、きっとこの勉強会の参加者に違いありません。

以下に、当日の主な講習内容をまとめておきます。

⟨自動車用塗料と自動車塗装について⟩

―自動車の外板に用いられる塗膜の厚さはどれくらいか?
A:約80~110ミクロンで人間の毛髪の直径とほぼ同じ。
―自動車用塗装はなぜ4つの層から成り立っているのか?
A:ひとつの層ではすべての要求を満たせないから。
―1台の自動車のボディに用いる塗料の量は?
A:灯油のポリタンク1本分程度で約18kg。

自動車塗装の基本でありながらも、あまり知られていないことが少なくありません。講習の最初のステップは、自動車用塗料と塗装についての基本的な知識を頭に入れることでした。ちなみに1台の自動車に用いられる塗料約18kgのうち、4分の1(約4.5kg)は揮発した有機溶剤(以下VOC)として排出されます。ただし、工場内で排出されたVOCは回収されるのですべてが大気中に放出されるわけではありません。

⟨ 環境対応から生まれた水性塗料⟩

自動車用塗料といえば、鮮やかさや発色のよさなどが注目されがちです。ただ、塗料に求められるのはそれだけではありません。環境対策も課題となっています。

たとえば、塗装後に放出されるVOCもそのひとつ。全世界で生産される車両が年間6000万台で、すべての車両に溶剤塗料が使われていたと仮定すると、1年間に排出される有機溶剤量は27万トン。20トンのタンクローリー1万3500台分に相当する量です。そしてそのVOCは、大気中のオゾン(O3)生成を促進し、光化学スモッグの原因となることが知られています。

そこで登場したのが、塗装後に揮発する有機溶剤が少ない水性塗料です。水性塗料は塗料中の有機溶剤を水に置き換えたもので、計算上ではVOCを溶剤塗料に対して約6割削減できます。現在はドイツで80%以上、日本でも約50%が水性塗料を使っています。

溶剤塗料にかわって自動車用塗料の主流となりつつある水性塗料に関してが、実はこの勉強会のメインテーマとなりました。ちなみに「水性塗料」や「溶剤塗料」という区分は塗料としての状態の違いです。したがって、実際に塗られ乾燥した後は同じ状態と考えられます。

⟨自動車用塗料の今後⟩

かつて自動車メーカーから塗料メーカーへの要求といえば「安くて良いもの」でした。しかし、現在では「安くて軽くて良いもの」と要求が変化してきています。これは、省燃費のために車両重量を軽くしたいという自動車メーカーのクルマ作りの意向によるものです。

さらに、これまで塗料メーカーに求められたのはVOC対策だけでした。現在では、社会的要求から現在はCO2削減も求められています。自動車塗装としては、塗装ブースでの温度/湿度管理のための電力消費量などを減らしていくことなどによる環境対策も考えられています。

■参加者(敬称略、五十音順)
有山勝利、石川真禧照、太田哲也、岡崎五朗、加瀬幸長、片岡英明、川上完、川端由美、工藤貴宏、日下部保雄、鈴木健一、鈴木直也、滝口博雄、西川淳、萩原秀輝、松下宏、山崎公義、吉田匠