2010年4月19日、トヨタ自動車・東京本社内において、「プリウス・HVシステムの変遷とブレーキについて」をテーマとしたAJAJ会員向けの勉強会が開かれた。トヨタからは現行型プリウスの開発にかかわった3人が講師として出席。AJAJ会員は60人以上が参加した。
■第1部テーマ
「HVシステムの変遷と新型プリウスのHV技術」
講師・トヨタ自動車シャシー開発部グループ長:高岡敏文氏
初代プリウスは1997年に発売。初代は初の量産HVであり、ガソリン車の2倍の燃費をねらいとして開発された。エンジンは43kWのアトキンソンサイクルの1.5L、これに30kWのモーターを組み合わせて登場。10・15モード燃費は28.0km/Lと、1.5Lのカローラの約2倍を実現した。
2003年に発売された2代目は、燃費性能と動力性能の高次元での両立が目指された。ハイブリッドの基本システムはほぼ初代と同じだが、エンジン出力を57kWに向上し、モーター出力も最高500Vに昇圧するコンバーターを搭載することで50kWを実現。10・15モード燃費は35.5km/Lとした。
2009年発売の現行型は、高速道路や冬季などの実用燃費の向上と、ハイブリッドシステムの車種展開性をテーマに開発。1.8Lエンジンは73kWを発生し、モーターも60kWに強化。クールドEGRや排気熱回収器などで実用燃費を向上させた。また、また、モーターリダクション機構の採用やパワーコントロールの改良によって小型・軽量化を実施。ハイブリッドシステム全体で体積を13%、質量を17%それぞれ低減している。
トヨタではプリウス以外にもエスティマ、ハリアー、クラウン、レクサスLS、同HSなど数多くのHVをラインアップしているが、2009年8月までに200万台のHVを販売。サイズ、性能が同等な従来ガソリン車のCO2排出量と比べ約1100万トンの排出量削減に貢献したということだ。
■第2部テーマ
「車体側効率向上技術」
講師:トヨタ自動車第2乗用車センターチーフエンジニア:大塚明彦氏
現行プリウスの燃費向上の取り組みのテーマは、「しっかり体感いただける低燃費へ」だという。カタログデータ上だけでなく、実際にユーザーが使用する環境での燃費をさらに向上させようということである。
そのためには、ハイブリッドシステムだけでなく、車両のあらゆる点の効率化が求められた。例えば、空気抵抗、空調システムの消費動力低減、省電力化などだ。
なかでも空気抵抗は重要な要素。車速に対する抵抗の増加割合が駆動系やタイヤの転がり抵抗などよりはるかに大きいからだ。120km/h時の走行抵抗のうち80%は空気抵抗が占めるという。そのため現行型ではボディだけでなく、ホイールハウス内やボディ下面の形状にも配慮。空気抵抗係数0.25を実現している。ちなみに、ミニバンやSUVより空力に有利なセダンでも0.3を切るモデルは数少ない。
興味深いデータとしては、消費電力による燃費の影響だ。モード走行時で旧型の平均消費電力は209W、新型は148W。燃費への影響は0.4km/Lだという。つまり、消費電力10Wあたり約0.07km/L。ハロゲン(55W)からLED(35.1W)ヘッドライトに変更するだけで約0.14km/L分なのだ。LEDはまだ高価であるが、プリウスに採用されたのにも納得がいく。